2025|Hiroshima
sora to umi ― 未来と交差するデッキ
bricolage17 sunset deck | 江田島・四郎五郎岬
広島県江田島市沖美町是長字四郎五郎——西瀬戸内、広島湾に浮かぶ江田島の西海岸。裏宮島と呼ばれる対岸にそびえる弥山を望むこの岬に、展望デッキ「sora to umi」が完成しました。週末レストラン《bricolage17》の一角に位置するこの場所は、老朽化した既存デッキの建て替えを機に、「未来との約束を交わす場」として再構築されたものです。
プロジェクトの出発点となったのは、空本健一さんの言葉でした。
「未来との約束を交わしたこの場所に、100年後も美しい夕日を眺める展望デッキを創りたい。」
この強い想いは、クラウドファンディングという形で多くの方々の共感と支援を集め、かつての展望台を、地域の新たな象徴へと昇華させました。
建築は、象徴的な2枚の円盤によって構成されています。わずかにずらして配置されたそれらは、宮島・弥山の頂上に軸線を合わせて設計されており、頂上の御山神社への遥拝所としての役割も担っています。着工前には実際に神社を訪れ、いただいたお供え物を基礎とともに打設しました。この行為が、空間に静謐な精神性を宿らせています。
円盤は「あなた」と「わたし」という関係性を象徴するふたつの存在です。それぞれが構造的にも独立した一本柱によって自立しながらも、わずかに重なり合い、手摺を一筆書きでつなぐことで包まれるような構成とし、まるで手を取り合うように空と海へと開かれていきます。空間的には、開放と浸透という建築的操作が施されており、訪れる人々は海と空、光と風、そして過去と未来のあいだを静かに漂うような感覚を得ることができます。
この場所は、単なる展望台ではありません。郷土・江田島への深い愛情を受け止め、人と人、自然と記憶、そして建築と未来とを結びつける、ひらかれたプラットフォームです。イベントや音楽、芸術といった多様な活動も受け入れる柔軟性を持ち、訪れた人々がそれぞれの「心の風景」を見つけるための装置となっています。
sora to umi——それは、空と海が交差し、時を越えて人々を包み込む、静かで力強い風景の一部となっていくことを願っています。
場所|広島県江田島市
用途|屋外デッキ
クライアント|NPO法人ブリコラージュ江田島
設計・監理/プロジェクトマネジメント|株式会社スタジオモブ
構造|堀江聡建築設計事務所
施工|中原建設株式会社
制作|有限会社賀茂クラフト
足場板|株式会社WOODPRO
行政書士|シャオヘイ
企画|結わふ
撮影・動画制作|心綴
竣工写真|exp 塩谷 淳