今宿のリノベ|02

RC造2階建て住戸群が連なるいわゆるタウンハウス形式の集合住宅のリノベーション。既存建物は壁式構造特有の制約がそのまま空間化されたような非常に機能的でコンパクトな構成であった。

クライアントが要望されていた開放感やアウトドアというキーワードを、ある種の閉塞感を生み出している従来型のn-LDKに倣った住戸タイプに対して、いかに空間を開放させるかがテーマであると考えた。

その中で建物のちょうどセンターに位置している上下階を繋ぐ階段に着目した。最も機能的であり、動線としての踊り場や通路も確保すると大部分を閉めてしまうような階段自体を開放させること。

部屋と階段を分離して考えるのではなく、部屋の中心に階段が据えられてるからこそ、上下階のコミュニケーションはもとより、壁で区切ってしまうとどうしても閉塞的になりがちなリビング・ダイニング・キッチン・そして2階の個室への動線に対しても、階段を回遊するようにひと繋がりの空間となることを目指した。

限られた予算の中で階段をやりかえるという決断は、非常に勇気のいることでもあるがこれから先この場所で育っていく家族の時間を考えるととても大切で最も重要なことのようにも思えた。

マンションリノベは既存躯体の状態や仕上げの選定、設備の更新・造作の作り込みによって予算感が変わってくるが、ここでは減築するように既存の構成から壁や天井を間引いてゆき小さなお子さんが最も触れるところでもある床材を中心に素材感を大切にしながら、お施主さんと共にひとつひとつ選択して決めていった。そして、既存のまま利用する部屋は余白として残しながらこれから先も家族が成長していくにつれてつくり続けられるような住まいのあり方を実現した。


場所|福岡市西区今宿
用途|住宅
設計・監理|株式会社スタジオモブ
施工|株式会社若杉建設
照明|株式会社盛光SCM
階段|有限会社賀茂クラフト
足場板協力|株式会社WOODPRO
撮影|exp 塩谷 淳