Interview:家を引き継ぐ暮らし<後編> 

22/03/05

-設計コンセプトを教えていただけませんか?

-スタジオモブ中尾(以下、中尾):初回打合せのときに鎌苅さんから「こんな暮らしがしたい」という想い溢れるプレゼンをしていただきました。できるだけそれに沿うように、というのは根っこにあったのですが、とはいえ限りある空間です。今回は一度スケルトンにしてしまって、「空間を再構築する」という考え方で進めていきました。

-鎌苅さん:基本方針として「オープンな空間にしていこう」という話は、はじめにしていましたよね。

-どんなプレゼンをされたのですか?

-鎌苅さん:僕たちがこういう間取りにしてほしいと依頼しても、自分たちが考えられることにはきっと限界があるだろうなと思いまして、具体的な要望というよりは「僕たち家族はこんな人たちです」という自己紹介といいますか、僕たちの”人となり”みたいなことをお伝えさせていただきました。

-中尾:マッシュくん(犬)も家族の一員として紹介していただきましたよね。プラン的にはワンルームなので、いわゆる間取りみたいなのは特にないのですが、でも、なんとなくダイニング・リビング・キッチンといった空間を、素材を切り替えたり要素を入れ込むことで「居場所」をつくるように計画しています。

-鎌苅さん:このプランのいいなと思うところは、座れる場所がたくさんあること。ソファ以外でも、階段にもキッチンとの境になっているこの段差にも、テレビ台にも座ることができます。座ることで目線の角度を四方に向けられるようになっていて、もし座れる場所がダイニングやソファだけだったら目線の広がりも限られてしまうのですが、座れる場所が増えることによって視線の広がりが増えて、お互いの視線が立体的に交わっていくのが面白いなと。間を開放させているからこそできる広がり方なのかなと思います。

-中尾:そうですね。

-これからどんな風に暮らしていきたいですか?

鎌苅さん:家のちょっとした修理は自分でやっていきたいです。これで完成ではなく、余白を残しながら家も僕たちと一緒に育っていくのが理想です。ようやくスタート!という感じがあってワクワクしています(笑)

-一緒に育つというのが、素敵ですね。

鎌苅さん:物件自体が自主管なので、自分たちで考えて管理し、つくっていける点もこの物件を気に入ったポイントの一つです。敷地全体の植栽管理を自主的にやってくださっている先輩住民の方がいらっしゃるのですが、僕自身も自分の家だけではなく、地域のことも教わりながらこの場所のコミュニティに携わっていきたいなと思っています。

-なんだか小さな町のような、感じがしますね。

鎌苅さん:そうですね。ここって建築としては「集合住宅」という扱いになるのですが、集合している住宅というか、ドミトリーというか、タウンハウス?長屋?みたいな、AかBかに当てはまらないところが面白さだなと思っています。ちょうど世代交代もはじまっているので息子世代が増えて賑やかになっていくと、さらに面白くなっていきそうです。

 

家のことも、地域のことも、自然のことも、その全部が家族のように大切にされている鎌苅さんご夫婦の想いが伝わってきて、人の想いがある場所には命が宿るんだなと力強いエネルギーを感じることができました。お庭づくりがひと段落されたころに、またぜひ遊びに伺いたいです。そのときにはきっと、新しい植物の息吹が家族の仲間入りをしているのかなと今からワクワクしています。