ビジネスマンな弁護士さん[後編]

23/12/02


◉前編
◉中編
◉後編


-理想のチーム像って、ありますか?

池辺さん:そうですね…。難しいですよね。自分がどこまで指示するかとか、あるいは指示しなくても自主的に動けるのか、とか。

-チームをつくるのと、会社をつくるのと、またちょっと違うのかなとも思ったり。

池辺さん:確かに確かに。

-スタジオモブだと、チームなのかなと思います。

池辺さん:なるほど。どんな違いがありますか?

-トップの人が、組織の末端をどこまで見ることができるかの差でしょうか。チームだと、ある程度の信頼関係があっての対話ができる距離感。

池辺さん:今の法律事務所で感じているのは、弁護士が多いというのもあって自由に任せている部分が多く、リモートも許容されているしコアタイムもないから、昼から勤務する弁護士も多いんです。でも、それはちょっと違うなと思ってて。僕としては、働き方の無駄は改善していきたいから、どこまで厳しくするかはともかく、管理型の組織で朝勤務して夕方帰るようなチームの作り方をしたいですね。

-効率的に業務をこなしてほしいってことですよね。

池辺さん:そうですね。効率的にやってほしいし、あとは、組織がある程度大きくなるまでは独裁でいいと思うんですよね。一番効率のいいやり方以外は認めないというか。

-なるほど。池辺流の効率術をぜひ教えていただきたいです。

池辺さん:効率術ですが(笑)経験からのことですが、弁護士の仕事効率でいうと、仕事をはじめたときがめちゃくちゃ忙しくてそれで効率化されていったっていうのはあります。

-時間内でやるべきことができるように。

池辺さん:あるいは、時間内には当然できないし、24時間かけてもできないところがあって、あ、これはダメだなと。だから、効率化は忙しい中で思いついていったって感じです。弁護士業以外の効率術はこれからだと思います(笑)

-今までやってきたことを相手に伝えるときって、言語化しないと伝わらないと思うんです。一人での効率化と、全体としての効率化はまたちょっと違うというか。

池辺さん:たしかにそうですね。相手に伝えるときには手順書みたいなものを準備しないといけないというのは注意すべきところで、メモアプリなどを使って残していこうかなと思ってます。

-基本的な発想が、弁護士さんというよりビジネスマンって感じですよね。

池辺さん:ビジネスがやりたいですね。弁護士事務所にいると資格に甘えちゃうので。だって、資格もなくちゃんと生活できている人が世の中にはたくさんいて、むしろそっちの方がふつうじゃないですか。その人たちの方が、すごいはずです。僕たちはベースに資格があるのだから、ちゃんと工夫をして会社の魅力を伝えることができれば、もっとよくなると思っています。

-理想とする経営者の方って、いらっしゃるのですか?

池辺さん:そうですね、いつもよくしていただいている経営者の方は、見習いたい部分がたくさんあります。

-「いい」経営者と、そうではない経営者があるとすれば、その違いって何だと思いますか?

池辺さん:一つには、自分が元々は何者なのか、ってことだと思います。経営者というのはあくまでもポジション。エンジニア出身の経営者なのか、営業出身の経営者なのか、法律出身の経営者なのか、自覚されている人はすごいなと思います。それって、本来自分ができないことを他人に任せたり、任せるにしても慎重に任せているんですよね。

例えば、営業出身の経営者であれば、営業周りのことならある程度自由にやっていいよって言うんです。もしダメなところがあれば、それはすぐに分かるので自由にやらせるんだけど、それ以外のことは慎重に進めていく。経営者である前に「自分が経営者でなかったら何者なんだろう」というのを自分で把握している方は、強いんじゃないかなと思います。

-自分の視野の限界を、把握されていらっしゃるということですよね。

池辺さん:そう、だから専門以外のことに対しては、疑心暗鬼になるくらい慎重に進めらています。

-法律に関すること以外で、経営者が見えていないことを池辺さんがサポートされることもあるのですか?

池辺さん:経営会議に出席させていただくときは、どうなんだろう、意見を発言するというよりは、問いを投げかけることが大事かなとは思っています。

-そういうときは、どういう視点で?

池辺さん:僕は、一社に注力していない分、いろんな会社を広く浅く何百社も見てきている立場なので、一般論として「だいたいこうやっているんじゃないですか」みたいな議論は得意だと思います。

-それぞれの課題に対して、その企業さん独自のものを今後提案できたらいいってことですよね。

池辺さん:そうなんですよ。その会社さんの特性もあるだろうし、フィットするしないとか、そのやり方はもう少し会社が大きくなってからの方がいいんじゃないか、とか。

-それが、池辺さんがおっしゃっている「新しい商品」につながるのでしょうか。

池部さん:それも商品にしていけたらいいんですけど、本当に役に立つかの判断が難しいので、もう少しストレートに役立ちそうなことを商品にした方がいいのかな。

-ストレートというのは?

池辺さん:パワハラ講習とか具体的なことですかね。

-今、考えていらっしゃることを誰かと思考のキャッチボールをしたりするんですか?

池辺さん:そうですね、この事務所の第一号として来てくださるスタッフさんとは共有しています。飲み会など私がお酒飲みながら話していることも全部覚えてくださってて。私としては思っていることを話しているだけなんですけれど、真剣に受け取ってくださってて。でも、すごいですよね。今務めているところを辞めて、新規立ち上げの組織に参加してくださろうとしている、その度胸がすごい(笑)

-何かが共有できていないと、一緒にがんばろうってならないと思うんですが、何が共有できいると思いますか?

池辺さん:何なのでしょう…。私としては割と当たり前のことなんですが、ひと言でいうとコミュニケーションだと思っていて、法律事務所で働くスタッフさんが一番嫌がることは、メールしているのに無視されてしまうとかなんです。確認したいことでも、今時間がないからまた後で、とか。そういう細かいコミュニケーションを怠らないことですかね。

-弁護士側からすると、なぜそうなってしまうんですか?忙しいから…?

池辺さん:できていないことを言われてしまうのが、嫌なんじゃないでしょうか(笑)もちろん忙しくて後回しになってしまうことってたくさんあるんですが、そういうときでもちゃんと「後回しになっちゃってます」って言えばいいだけだったり。

-なるほど(笑)

池辺さん:それが言えるかどうか、ですかね。僕は割とかっこつけずに言えちゃうタイプなので「ごめん、今日きつくてできんかったから、明日でもいい?」とか言っちゃいます(笑)もちろん、自分を大きく見せることが必要なときもありますが、等身大で向き合うことも大切ですよね。

-いいと思います!

池辺さん:ありがとうございます(笑)

-では最後に、これから池辺さんの事務所に参加してくださるであろう未来のチームメイトにメッセージをお願いします。

池辺さん:たくさんご迷惑もおかけすると思うのですが、弁護士業界で卓越することはそんなに難しいことではないと思っているので、そこは安心してください。ただ、この業界でトップになることだけで満足したくなくて、すごい会社はたくさんあるから、もっと上を目指して、彼らと並べるくらいにがんばっていこうぜ!っていうのがメッセージです。

-いいですね~!これはもう一緒に働きたいと思っちゃいます(笑)

池辺さん:ありがとうございます(笑)

編集後記
とにかくチャーミングな池辺さん。夢にまっすぐで、自分にも相手にも等身大で真摯に向き合う姿がとても印象的でした。こんな気さくな弁護士さんがいらっしゃれば、若い世代の経営者の方も相談しやすそう。そしてなにより、何事にも一緒に挑戦してくださいそうだなと思いました。ちなみに池辺法律事務所のロゴマークは、池辺さんとAIの共作とのこと。「あなたの番犬です」というメッセージが込められているそうです。心強い!