一つずつ夢を形に[中編]

23/06/07


◉前編
◉中編
◉後編


-お二人は、もともとお知り合いだったんですか?

齋藤:川本歯科の川本先生からのご紹介でしたよね。

先生:そうそう。この病院が父の代から30年ほど経ってて、そろそろリフォームせんといけんなと設計事務所を探してたときに、川本先生がちょうど病院をつくられていて「いい建築士さんいるよ」って、教えていただきました。で、内覧会に行ったらもうびっくり。歯科医院や病院を「かわいい」なんて思ったことなかったし、まさかこんな素敵なデザインができる人が広島にいるとも思ってなくて「頼むならぜったいこの人にお願いしよう」と思いました。ただそのときはすぐに改修っていうことでもなかったから、しばらくして連絡して、ね。

齋藤:そうでしたね。最初は全部やりましょうということだったけど、営業しながらの改修だったから段階的に進めていく流れになって。それから一緒にご飯を食べに行ったり僕たちのイベントにも来てくださったりで、色々と仲良くしていただいてます。

-先生同士は、お知り合いだったんですか?

先生:高校のときの同級生なんです。あ、でも、交流がはじまったのはお互いに歯科医になってからで。リフォームすると決めたとき機能的に困ってたことがたくさんあって、ものがめちゃくちゃあったし、スタッフルームはユニフォームを干すところもなくて、ロッカーも足りてないしという感じで、だからスタッフにとってもいい環境にしたくって。でもせっかくリフォームするならふつうの病院にはなりたくないし、機能とデザインどっちも大事で。ただそれを誰にお願いしたらいいかも分からないっていうタイミングで川本歯科の内覧会へ行って「この空間をつくっている方だったら、感覚が合う!」っていう絶対的な自信がありました(笑)

齋藤:嬉しいですね。最初のころは、先生のすきな店を回りながらイメージを共有しましたよね。クリニックは行ってないですが(笑)

先生:やっぱり、実際に「見て」共有できると共通認識が早いかなと思って(笑)うちは「矯正歯科」だから来院される年齢層が比較的若くて、小学生~高校生、あとは20代30代の女性が多いんです。そこをターゲットと考えたときにホテルっぽいクリニックも最近はあるけど、高級感を出しすぎると一人で来る高校生の子にはちょっと敷居が高くなっちゃう。だから、彼女たちも気楽に入ることができて、でもかわいくてみたいなイメージを伝えて、色味とかは一緒に決めていきました。

齋藤:グレーの壁はフレキシブルボードっていって、使っている面は素材の裏側なんです。表面はムラがなくてキレイなんだけど、それだと表情が出ないからあえて裏を。

-かわいらしさもありつつもオシャレな感じがするのは、色のトーンを抑えているから、でしょうか?

先生:私が思うになんですが、たぶんそれは、齋藤くんのデザイン性なんだと思います。例えば「これよくない?」という感覚が近いので共感できるのはもちろんなんですが、そこからいざ生み出す段階になると、アウトプットに男性的なエッセンスが入ってカッコよさがプラスされてて。「ああ、齋藤くんがデザインするとこうなるんだ」というのもまた楽しくて。

-それは意識的にチューニングしているんですか?

齋藤:意識的というよりは、コンセプトのストーリーが共通認識としてOKであれば、僕的には「可愛らしく設計する」っていうのが逆に難しいかもしれない(笑)

先生:一番最初の提案で、受付カウンターにアーチがあったんですけど、ちょっとカッコイイ方がすきな私としては、アーチがたくさんある感じが可愛い寄りにいくのかなと「どう思う?」って齋藤くんに聞いたら「これよく見て」と言われて。曲線のアーチではなくて直線で構成されたアーチでやってくれてたんです。おそらくその違いって大きな差として出てくると思うんですよね。たしかそのときに「たぶん、僕がつくったらカッコよくなっちゃうんです」って言ってて、もう笑ったよね(笑)でもそのちょっとした加減が、私の好みに合うなと確信しました。

齋藤:今、お二人が座っているところも、収納の魔術師(先生)のアイデアなんですよ。

先生:実はここ全部収納で、齋藤くんも「おそらく全部は使わないと思いますよ」って言ってくれてたはずなのに、お父さん全部ものを入れちゃって。だからやっぱり作ってもらってよかったです(笑)

-完売御礼なんですね(笑)

齋藤:僕も最近、家の片付けをしたんですが、倉庫って使わないものを入れる場所だと認識してたらいつの間にか一生使わない状態になってて。だから「使うものを置こう!」という考えに変更しました(笑)

先生:ね、大事だよね。

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