路地の奥に佇む小さな小さなお店。
街の中にふと現れる路地空間は、そのアプローチ自体がとても魅力的で、まずはその場所のあり方から考えることをプレゼンした。周りには美容室や雑貨屋さんも建ち並び、多くの人々が行き交う共用部だからこそ、この場所へつながる道に滞在できるような場所づくりを計画し、人が介在していくことで生まれる空間として、お客様がお客様を呼び込むような状況を作り出すことを考えた。
実際に依頼を受けた2坪ちょっとの小さな空間では、ホットサンドを中心としたカフェの2号店を出店するという計画だった。当然ながら、2坪という空間に厨房機能と客席を設けるためには、最小限の設備と動線での対面販売が基本となるが、1号店は海辺近くの建屋を改修して作られた広々とした厨房と客席を確保したお店であったため、空間の広さやそのイメージを理解いただく事が最初の課題となった。さらに、2号店の出店エリアとして、街の中心市街地であり、全く異なる立地と客層などから、その空間で全て完結するのではなく、もっと街中に寄与した場所のあり方、つくり方として、HOT SUNSの「サテライトキッチン」という位置づけで厨房機能のみを街の中に設計し、街全体が客席であるような物語を提案した。
キッチンと街とを繋ぐ境界線がいわゆる建物のファサードとなる。私たちは3枚の扉とディスプレイをプロダクトのように扱い、街のアイコンとなるような場所として設計を行った。ここでは、店主とお客さんとの対話が生まれ、天候や、気温、またはお客さんの人数に応じて、扉の開き方が変化しコミュニケーションが移り変わっていく。結果的にテイクアウト専門という形式のお店づくりということになるが、この場所で描いている未来像はまだまだ先にあり、将来的に近隣のテナントが空くことがあれば、そこに客席を設計していくことや、公園やパブリックな場所を客席として捉え、町全体に賑わいを生み出していくことも想定し、そのお店づくりは未来へと続いてゆくことだろう。
場所|福岡県福岡市今泉
用途|飲食店
クライアント|HOTSUNS
設計・監理|株式会社スタジオモブ
施工|アイ・ホーム
サイン|ユイモクヤ
撮影|exp 塩谷淳