シコウノバ

呉高専のインキュベーション授業の一環で広場の企画、コンセプト、設計、施工、全てを学生と共に行うプロジェクト。現役学生は、機械、電気、環境、建築から構成されており、現役学生だけでなく、OBも参加して、学科横断・学年横断、そして地域にも開放していくというプロジェクトです。企画コンセプト立案のタイミングから「何故そこにその広場をつくるのか」を粘り強く幾度も議論。コロナの最中でコミュニケーションを断絶された学生活動において、色々な憤りも表現していこうと進んでいきました。

授業とは別に、夜の部においても2時間、時に3時間という長丁場でのミーティングになることもしばしば。考えること、それを聞くということがこんなにも学生を成長させていけるのかと感激さえしました。
その聞くというスタンスは、インキュベーションワークという授業で声をかけていただきました谷村 仰仕さんや、林 和彦先生のスタンスそのものでした。お二人のもとで学生は、先生と生徒という分断される関係ではなく、境界がない一体化された関係を築かれていて、スタジオモブ編集長の清水綾子と共に、広場のアドバイザーとして、そして建築家として関わることができた幸せを感じています。

この広場は、「シコウノバ」と題されています。
学生自身が、考えはじめる、思考する、施工するなど全てを包含するという意味です。学生が決めました。

元々雑木林だったこの場所は、学校内の残土処分の場となるため、伐採され、埋め立てられていました。雑草と荒れた地では学生に活用されることもなく、学校の中で白紙と化していました。

白紙の状態ではきっかけが生まれず、何も生まない場としてただ存在するのみでしたが、そこに人間の身体的な距離などを導き出した「グリッド」を当てはめることで、人工的な森を作る計画となりました。何もなかった場所に、きっかけが生まれ、柱を渡し、テーブルや椅子を置き、屋根をかけ学生イベントなどにも利用されていきます。

何より、日常の延長線上にこの場所が存在し、待ち合わせや休憩に使える場所を学生自ら変えて作っても良いという広場があることは幸せだと思います。

呉高専の学生は、優秀だと事前に聞いていましたが、優秀さの中に「行動する」というアナログな強さを持ち合わせていることが魅力的です。撮影時にも学生が立ち会い、自分たちが見せるべき演出や、物の配置なども考えていて、頼もしかったです。

色んな方々にこの活動が届くように願っています。


場所|広島県呉市 
用途|広場
クライアント|呉高等専門学校
設計/監理|呉高等専門学校学生チーム+呉高等専門学校教授チーム+株式会社スタジオモブ
施工|呉高等専門学校学生チーム
撮影|exp 塩谷 淳

2022|Hiroshima