2022|Hiroshima
呉高専のインキュベーション授業の一環として、学生と共に広場の企画、コンセプト、設計、施工を行うプロジェクト。現役学生は機械、電気、環境、建築の分野からなり、OBも参加し、学科や学年を超えて地域にも開放していくプロジェクトです。企画コンセプト立案のタイミングから「何故そこにその広場をつくるのか」を粘り強く幾度も議論。コロナの最中でコミュニケーションを断絶された学生活動において、色々な憤りも表現していこうと進んでいきました。
授業とは別に、夜のミーティングでは2〜3時間にわたる長丁場が頻繁に行われました。考えることや聞くことが学生の成長につながることを実感しました。考えること、それを聞くということがこんなにも学生を成長させていけるのかと感激さえしました。「聞く」というスタンスは、インキュベーションワークという授業で声をかけていただきました谷村さんや、林先生のスタンスそのもの。お二人のもとで学生は、先生と生徒という分断される関係ではなく、境界がない一体化された関係を築かれていて、スタジオモブ編集長と共に、広場のアドバイザーとして、そして建築家として関わることができた幸せを感じています。
この広場は学生によって「シコウノバ」と題されています。学生自身が、考えはじめる、思考する、施工するなど全てを包含するという意味です。元々雑木林だったこの場所は、学校内の残土処分の場として伐採され、埋め立てられていました。雑草と荒れた地では学生に活用されることもなく、学校の中で白紙と化していました。
白紙の状態ではきっかけが生まれず、何も生まない場としてただ存在するのみでしたが、そこに人間の身体的な距離などを導き出した「グリッド」を当てはめることで、人工的な森を作る計画となりました。何もなかった場所に、きっかけが生まれ、柱を渡し、テーブルや椅子を置き、屋根をかけ学生イベントなどにも利用されていきます。
この場所が日常の延長線上に存在し、待ち合わせや休憩に利用できる場所を学生自ら変えて作っても良いという広場があることは幸せだと思います。呉高専の学生は優秀であることは事前に聞いていましたが、「行動する」というアナログな強さを持っているのが魅力です。撮影の際にも学生たちは立ち会い、演出や物の配置などを考え、頼もしさを感じました。
この活動が多くの方々に届くことを願っています。
場所|広島県呉市
用途|広場
クライアント|呉高等専門学校
設計/監理|呉高等専門学校学生チーム+呉高等専門学校教授チーム+株式会社スタジオモブ
施工|呉高等専門学校学生チーム
撮影|exp 塩谷 淳
2022|Hiroshima