ong

ここは本川町の太田川沿いの道路を一本入った閑静なエリアです。近くには原爆ドームが徒歩10分先にあり、周辺にはお洒落なお店もある集合住宅地でもあります。最初に訪れた際、元居酒屋の和格子の扉が入口に残されていました。空間はすでに解体されていて、コンクリートのスケルトンになった空間の中でもその扉は主張していました。この玄関扉に惚れた、懐かしいと思うクライアントは美容師です。

ヒアリングの中で気になった言葉がいくつかありました。「扉に惚れた」という言葉以外に、その空間で一緒に歳を重ねたい、かっこよさよりも柔らかさや清潔感があった方がいいという要望。一方で、和モダンでレトロ感、そして懐かしさが良いという、清潔感とは相反する状態を求めていることに気が付きました。矛盾ではなくコントラストが必要なのだと感じました。

コントラストのある状態をさらに深堀してイメージを共有した時に、周りはラフな状態だけど、そこに挿入されるものに木が使われたり、ギャラリーのような状態を求めていることが分かりました。また、和モダンの雰囲気も扉からのインスパイアを受け、和の要素を感じられるギャラリー的な可変性のある状態を目指そうと考えました。

また、今回は予算と空間の制約があり、コンクリートの空間の中で壁を作りすぎると狭くなるため、壁の代わりに透明な布による仕切りを考えました。布は可変性があり、透明で奥行きを感じられるものです。和の伝統的な空間に現代的な柔らかい布を組み合わせることで、躯体の強いコンクリートの存在も柔らかく感じさせることができ、コストも抑えることができると考えました。

路地を設計するように必要所室を当てはめていきました。待合を広げてカットスペースを1か所削減したことにより、ONGの空間に余裕が生まれ、場所の価値が高まることに成功。バリスタやショップとのコラボレーションなど、地域に浸透し、機能と空間の思考が上手くマッチした美容室になることを期待しています。


場所|広島県広島市
用途|美容室
クライアント|ONG美容室
設計/監理|株式会社スタジオモブ
施工|株式会社HIROMITSU
撮影|exp 塩谷 淳

2022|Hiroshima