空き屋材循環プロジェクト(岡山大学生協)

空き家再生を通じた持続可能な建築の試み

現代社会における空き家の増加は、環境問題だけでなく、地域社会や暮らしの質にも大きな影響を及ぼしています。この問題は建築家にとっても避けては通れず、新築やリノベーションだけではない、既存の建物や材料を活かした持続可能な建築を実現することが今後の自明な課題です。特に、空き家をどのように利活用して地域の歴史や活力を守るかが重要なテーマとなってきます。

本プロジェクトでは、空き家の再生を通じて建物の“過去”を活かし、そこから新たな価値を創造することに挑戦しました。具体的には、取り壊し予定の建物から土壁を剥離。洗浄と着色を施して現場で左官を行い、再生利用をしています。この過程によって、自然素材が持つ風合いを活かした環境に優しい選択肢を得ることができました。また、築100年以上の木造建物から取り出した柱は、テーブルの脚として甦らせています。あえて柱の痕跡を残し、時代の余韻を感じられるデザインにすることで、かつての建物が持つ歴史や物語を空間に宿しています。

この取り組みは、単なる建築の再生利用にとどまらず、これからの建物を「考える場」として提案する意図もあります。岡山大学の学生たちが訪れるこの場所は、将来の住まいについて考える場、さらには自分の住処について思索を巡らせる場としても機能することを目指しています。空き家の利活用を通して、物理的な住まいを提供するだけに留まらず、「住む」という行為の本質や、地域の歴史・環境との関わりについて再考する場を創出したいという願いを込めました。

過去と現代が融合する持続可能な建築の可能性を追求しながら、地域社会への貢献と環境への配慮を重視したプロジェクト。建物の再生を通じて、未来の建築と暮らしのあり方を探る第一歩として、さらなる模索と挑戦を続けていきたいと考えています。

2024|Okayama