MASCAT UNION(岡山大学生協)[3F|ホール]

岡山大学は、広大な土地と一体となって、大学と地域が境界のない公園のような場所として開かれています。

大学内にはいくつかの食堂やカフェがありますが、その中でもマスカットユニオンの食堂は学生にとって最も利用率の高い場所です。30年前に改装されましたが、内装の老朽化と新しいブランディングを目指して再度改装をすることになりました。

ヒアリングや現地調査を通じて、学生たちの食事に対するニーズの多様性が明らかになりました。複数人で食事を楽しむ人や、一人でさっと食事を済ませる人、コロナの影響によりパーティションで区切られたテーブルで食事する人などさまざまなスタイルです。もっと楽しい場所にしたいと思う一方で、この場所は1日に2000〜3000人が行き交う場所であり、食堂のルールが確立されています。学生は並んで注文と支払いをして食事をすませ、学習場所に移動するというルーティンが見受けられました。

システマティックな運営は必要ですが、より楽しく自由で、食事だけではなく会話やプロジェクトも生まれるような環境を整えたいと考えました。

実際に、2階には260席以上、3階には少なくとも230席を確保する計画ですが、かなり手狭な状況です。2階の260席は家具を最大限配置する必要があり、できるだけ人を周囲に流せるように窓際の席を設け、開放的な雰囲気をつくりました。また、西日が強い時間帯にはカーテンを閉めることができるように、特注の柔らかいカーテン(ファブリックスケープによる2層構造のカーテン)を提案しました。

3階では、食事だけでなく、昼のピーク時でも利用できるように、外観の楕円形をシンメトリーに反転させ、カフェゾーンとスタンディングゾーンの二つのエリアに個性をもたせて、230席を確保しました。この場所は食堂ですが、学生が座る場所を考える余地や、食事の後に課題や議論をする場所など、学生がどこに座るかを考える余白を持たせるような場所を計画しています。学生の創造力を食事と共に高めることができると信じています。

また、この場所では1日に3000人が行き交うスピード感や目的を達成するための手段として、サイン計画も行いました。サインはスピード感をオブジェクトに変換することができないかと考え、食堂のメニュー(rice ,noodle ,sidedishなど)と返却口(return)など立体飛び出しサインとしてデザインを施しました。

もう一つ重要なのが、それらの食堂までのアプローチです。エントランス入口は、遠方からでも営業状況がわかるような行燈サインをつけたいとの要望から、白く発行する照明型のサインを計画しました。またそのサインが際立つように、老朽化が激しかったテントと屋根を、背景となるように黒いフレームと屋根に作り替えています。

アーチ抜けた共用廊下の階段にも西日対策として、特殊加工されたステンレス製のカーテン(ファブリックスケープによるクラッシュ加工)を計画。強い光がきらめく中で柔らかさを演出します。また、元々活用されていなかった屋上のスペースを利用できるようにし、マスカの中庭として円形劇場のようなベンチとテーブル席を設けました。天気の良い日には快適に利用されています。

この計画された場所で、学生が楽しみながらクリエイティブなアイデアを生み出し、学生から利用の提案が生協チームに寄せられることを期待しています。


場所|岡山県岡山市北区
用途|飲食店
クライアント|岡山大学生協組合
設計/監理|株式会社スタジオモブ
施工|土手工芸
撮影|exp 塩谷 淳