木ノ本のリノベ

築40年の分譲マンションに暮らす夫婦(齋藤の両親)の改修計画である。
この場所は、約40年前に物件を購入した両親が子育て期間を終えライフスタイルの変化に対応した住居を求めて、改装を行う決意をしたことからはじまった。

3LDKだった住居は4人暮らしにとって、各部屋を子供部屋として活用し、夫婦はリビングで過ごすという構成には最適の間取りではある。しかし現在は、近所に住む姉と孫の面倒を見ながら過ごし、また遠方に住んでいる私たち齋藤一家6人が、たまに帰省する際に、仕切りが多い間取りを窮屈に感じていた。

床に座って過ごしたり、キッチンにいても孤独にならないよう、みんなで顔を向き合わせて過ごせる解放感のある場所がいい。そんな想いをここ数年聞き、改修することになった。

また、父は航空学校の教師をしており帰宅後もPC作業、趣味の航空機系のおもちゃ、孫と一緒に工作ができる場所が必要。なによりもモノづくりが得意である父が創作意欲の沸く場所と広いスペースが必要である。

そして母は、趣味の押し花による作品づくりのために、いずれにしても広い作業場とその収納場所が必要である。作品を展示できるような棚や壁を求める一方で、二畳ほどの小さな小上がり和室も希望していた。そこで孫と寝たり読書ができるような落ち着いた場所。要望はたくさんあるが、マンションなのでコンパクトにまとめつつ広さを創出する工夫が必要であった。

今回のテーマは、新しい懐かしさ。父と母の生まれて育った実家は岡山の田舎の家暮らしで、障子や襖があるような古民家であった。大阪に移住し、分譲マンションにそのまま住んでいるためそのような生活からは縁遠かったが、改めて新築らしさよりも新しい懐かしさのある場所を作ることをめざした。

必要な所室は小屋を建てるように木造で組み集約させることとした。また障子や木組の中に真鍮やFRP素材、LGSなどの金属素材、そして解体するまで隠れていた、RCの梁型を現しところどころに異素材を介入させることで、レトロモダンな要素(新しさと懐かしさ)が同居する構成としている。

家や空間というのはボーダレスであってほしく、大きな器であってほしいと常々考えている。家族とはいえ、個人それぞれ。友人がよく来るような場所でもある。いつでも何人でも、いろんな素材をも受け入れてくれるような場所。そして開放感のある美しい家をこれまでの感謝をもって紆余曲折しながら完成させた。色んな工夫のある暮らしをしながら晩年も楽しんで過ごしてほしいと願って。


場所|大阪府八尾市
用途|住居
設計/監理|株式会社スタジオモブ
施工|株式会社ボッチ
撮影|exp 塩谷 淳

2023|Osaka