記憶の住処

賃貸集合住宅は不変性と可変性のバランスで成り立っている。
そこでは、移り住む人々の記憶が不変的な建築としての構造物に染込みながらも、
住人の生活や環境は可変し続け、ある時間軸の中で住む人が変われば、新たな空間として更新される。
それが賃貸と分譲との違いである。
賃貸とは記憶の継承であり、私たちはその時間軸の中で、
人々の記憶を紡いでいくような賃貸集合住宅のあり方を思考したい。
ここでは、「住む為のきっかけとなる器」を設計し、建築が記憶を無くすのではなく、記憶を再構築するものとして提案する。
ある時、夫婦が木を植えて公園を作り子どもの遊び場を作った。その家族は、より大きな家へと移住した。また、大学生が住み始めた。木にはハンモックを掛けて昼寝をした。
生活する人が、植木鉢に緑を彩るように、人々が生活、記憶を器に継承していく事を期待して。

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