人時(ひととき)紡ぐ対馬石 

21/04/14

長崎県対馬市の店舗リノベーションプロジェクト。

“一燈照隅”の概念の下、地域のみなさんと、そして対馬を訪れた方々と一緒に対馬を盛り上げたい。飲食の場としてだけでなく、地元の方が集える場であり、来ていただいた方へ向けた情報を発信できる場として、対馬の様々な活動の“BASE”をつくっていきたい。

お施主さんの深い思いに包まれて対馬の拠点となるカフェがオープンしました。

対馬に何度も足を運んだ私たちが最初からずっと惹かれていたもの。
それは、“石”の風景です。
石屋根の倉庫、山々からのぞく岩肌や岸壁、まちの中の石垣。 人間では作り出せない自然素材の圧倒的なパワーを感じました。

新たに誕生したカフェには、対馬の豊かな自然の風景やその自然から溢れ出る力を込めています。山で採石した石を中央に据え、岸壁の柱状節理をイメージして六角柱で構成したベンチを制作しています。この空間を背景にイベントや会話が弾み、より豊かな時間が過ごせるのではないかなと思います。

店内中央に据えた、一際目を引く石。
この石を採石した山は、偶然にもお施主さんのおじいさんが元々所有していたのだそうです。時代を超えておじいさんの想いも宿り、空間の象徴となる印象的な存在になりました。何度見てもどこから見ても美しい。自然光を浴びて多様に変化するその表情は、日によって時間によって全く異なりとても魅力的です。

そして静かにどっしり佇みながらも、これからこの場所で紡がれるストーリーを温かく見守ってくれるような気がします。

ここに島内外から笑顔と人が集まり、店主夫妻のあたたかい人柄に包まれて、おいしいコーヒーを楽しんでほしいと思います。

現場後記

解体すると見えなかった部分がむき出しになり補修が必要な箇所や既存の活かし方を考えていきます。

壁・天井の補修をしてフラットにしていきます。そこに塗装が入るとガラッと雰囲気が変わり“現場感“からお店らしさを持ちはじめます。

そして家具が搬入されると空間に奥行が出て広くなった感じがしました。

家具塗装はセルフで行ったのですが、塗装屋さんにも一部やっていただき、やはりプロの技は美しく感動しました。

全体が整い、マシンを入れるとカフェ感が増していよいよオープンのわくわくが高まります。竣工写真はまたアップしますのでお楽しみに。

対馬に常駐して現場を見る経験は刺激と学びの多い日々でした。
職人さんの技術を近くで見ることができたこと、空間が出来上がる様子を見届けられたことが嬉しかったです。建具の位置や、塗装の後ろに隠れる昔の壁の質感、おじいさんの山から採石した石、対馬の風景をイメージした家具。

この場所に確かに刻まれてきた記憶や対馬の風景をここに残して、さらに更新されていく未来を楽しみにしています。