大須賀町の家 リノベーション 

21/02/19

広島市内にある中古マンションの一室をリノベーションするプロジェクト。1階にはオーナーさんのクリニックが入り、品のあるグレーの塗装に「Sky Clinic」の文字が目を引きます。広島駅からほど近い大須賀町に位置するこのマンションからは、築庭400年を誇る縮景園が眺望でき、幾何学模様が魅力的な物件です。

では、さっそく中へ。

と、その前に。
まずは改装前の様子を。キッチンダイニングスペースと和室が2つ。いわゆる「田の字型」でした。

では改めまして、お邪魔します。

既存の間取から不要な壁や建具を解体し、さぁ、今からはじめるぞ!という現場です。右手奥の和室が撤去され光が溢れる印象的な場所になっていました。元々、床には絨毯が敷き詰められていましたが、それを剥いでみると美しいフローリングがお目見え。ちょっとレトロな雰囲気がまたいいです。一番のオススメポイント、ということで写真もアップで。

この感じ、懐かさに溢れてますなぁ。

特徴の一つでもあるベランダは、部屋を囲むようにぐるっと一周。川沿いは遊歩道になっているので、騒音もなく静かに景色を堪能することができます。水面に反射する影絵もキレイですね。

2部屋あった和室は1部屋(8畳)だけを残し、新旧のバランスを熟考しながらプランを練っていきました。窓が多いためどこの部屋からも光が差し込み、この部屋は時間の移ろいと共に暮らせるんだろうな~と、すでに妄想が広がります。

今回は、賃貸物件のリノベーションということで、デザインと並行してビジネス観点も踏まえながらプロジェクト全体を監修していきます。となると、予算組も大事な要素になりますので何を残し何を新調するか、そのジャッジはとても重要。残すものにはチェックを入れていきます。

現場で見かける職人さんたちの手書きメモ。木材やコンクリートに直接書いていたりと様々ですが、建物と会話しているようで、このメモシリーズを見つけるのが個人的にすきなのです。

事前にセレクトしていたサンプルを現場で色合わせしながら、お施主さん含めたチームで最終確認。光の具合でサンプルの色が変わってしまうので自然光に当てながら慎重に選んでいきます。幾多ある色の中でも「グレー」が一番奥深い…。

今回のコンセプトはズバリ「ポテンシャルを活かす」
「既存の環境と共に向き合う新たな外側と内側」というテーマで、素材の個性を生かしながらプロジェクトを進行しました。どこの空間にも個性は存在していて、それを生かすという行為がとても美しく、過去の痕跡が個性となり新たな要素をポンと置くような、作り過ぎない魅力を提案しています。

ここで登場するのが先程の素敵な床。
足りない部分を「追加して補う」という発想ではなく、床そのものを「引っ越し」させて空間に連続性を持たせます。

床の一部をキレイに剥がして…

じゃじゃん!

引っ越し元の床には全く別の素材を組み合わせることにより、コントラストが効いた場所になりました。

それでは、完成した室内をご案内します。

大きなキッチンカウンター。パンもピザも作れそうな広々天板!収納もしっかり用意されています。朝は珈琲を淹れて、そのまま少し読書をして、リモートで仕事もできちゃいそうですし、外の景色も眺められるという特等席。

畳が全体構成のアクセントに。新旧のバランスを活かすというこの物件ならではのポテンシャルが発揮されています。リノベーションの醍醐味は、ゼロから生み出すのではない分、すでに存在している100の要素からどこまで引き算させるのか、その見極め。ギリギリ最後に入れる「塩ひとつまみ」が重要だったりしますよね。今回は光がその役目を担ってくれたような気がします。

引き渡しを無事に終え、ちょっと一息な兄さまたち。
新たに誕生したこの場所に、住み手の方の人生と時が重なってどんな変化をしていくのでしょうか。楽しみに見守りたいと思います。

【編集後記】
解体後の現場には、素材として眠っていたものが至るところで顕在化。光と時間を纏って独特の表情を持っていました。素材の組み合わせと意図して作ったものではないからこそ、偶然の発見が面白く、化粧を施す前のこのタイミングにしか見えないリノベーションならではのお宝です。レンズを通すと時間が一時停止するので世界を独り占めできそう。という、アートピースたち。

ほほほのほ~