Interview:ホテルエトワス天神 

21/12/22

 

2021年11月に第4期工事を終えた、福岡・天神の街中にあるビジネスホテル「ホテルエトワス天神」。ビジネスホテルの在り方をつねに考え、時代の変化に合わせてアップデートさせたいという想いを持ったオーナーの植本さんに、今とそしてこれからのビジョンについてたっぷりとお話を伺いました。

 

ホテルエトワス天神

”天神のど真ん中” 地下鉄空港線「天神駅」より徒歩3分という絶好のロケーションに位置し、ビジネスから観光まで幅広い分野で利用できるビジネスホテル。ホテル1階には地元福岡に根ざした”THE ONO MARKET”が提供する長浜市場直送の鮮魚をメインにした九州博多料理を、2階には旅先での疲れを忘れてゆっくりと自分の時間が過ごせる”宿泊者専用”ラウンジがお客さまをお出迎えします。

 

インタビューを行ったのは、第4期工事がまもなくスタートしようとしていた10月中旬。最終打合せを兼ねた現場をお尋ねしました。

 

-今回、第4期工事ということですが、モブに設計を依頼いただいた最初のきっかけを教えてくださいますか?

植本さん:きっかけは共通の友人の紹介でした。
第1期工事は今から4年前の2017年に行っているのですが、その2年くらい前から段階的な改装を考えていました。当ホテルは20年ほど前にオープンしているので、そろそろハード・ソフト様々な面を変えていく段階じゃないかと考えていて、そのためにはフロントにつづくこの2階部分のスペースの改装は避けては通れないんじゃないかと。当時、私が考えていたプランをいろんな設計士さんに相談したのですが、なかなか意思の疎通ができなくて目的を共有できないもどかしさを感じていました。そんなとき、友人に相談をしたところ「若くて柔軟な人がいるよ」と、中尾さんを紹介していただいたんです。

-そうだったのですね。

植本さん:設計士の方々に自分の想いを伝えるなかで、「フロントに予算の比率を高く」といった意見が多かったのですが、実際のところ、お客さまがその場所にどれくらい滞在しているのかと考えてみると、おそらく数分なんですよね。そしてフロントを他施設と差別化することは難しく、その数分のためだけに大きな予算を使って他をおろそかにしてしまっては、お客さまを迎え入れるというホテルの在り方として矛盾があるのではと感じていました。だから私の優先順位として、フロントは高い位置になかった。それを中尾さんにお話したときに「僕もそうだと思います!」と、私の案に乗っかってくださって、そこからトントンと進んでいきました。

-当時、植本さんが一番大切にされていたことって何ですか?

植本さん:そのころ(2017年)は今の状況と全く違っていて、福岡のホテル業界は国内客やインバウンドの需要が高く、需要が供給よりも多かったんです。週末や複数のイベントが開催される日はホテルの室数が足りないと言われており、多少単価が高くてもお客さまが来てくださる時代でした。でも、この状況が果たしていつまで続くのかという懸念が私の中にはずっとありまして。ホテルはどんどん建設されて、ホテルチェーンも続々と参入してくるし、競合が増えるとハード・ソフト様々な面での差別化を行わなければ、勝ち抜くことはできません。イノベーション、つまり宿泊施設としての新しい価値を生み出さなければならず、”他施設が真似できない”当ホテルのオリジナリティ溢れるコンセプトの打ち出しが必要不可欠であると、常に考えていました。

植本さん:当ホテルには、フロントからロビー周りにまとまったオープンスペースがあるのだから、チェックイン前後の時間をデスクワークや読書、観光の合間の休憩など、旅先での様々なシーンを自由に過ごしていただけるような空間にしつらえたくて、まずはここから改装をはじめました。

-第1期工事が家具、第2期工事がフロント、第3期工事が朝食スペースとトイレ、そして今回の第4期工事が家具のレイアウト変更ですね。

植本さん:もちろん、客室の改装ということも考えられるのですが、差別化の対象を客室にしてしまうと物理的に限界が多くって。ファミリー層がターゲットのシティホテルとは違い、平米数を広げることもできないですし、例えば「客室に新しく〇〇入れました」と言ったって、他施設にもある。ベットもお風呂も、もちろんあります。客室において多少の差別化はできるかもしれないけど、圧倒的な差別化にはつながりにくい。すぐに他施設でも真似できるので、結果、差別化にはなりません。だから、ビジネススペースに特化して、フロント前のこのスペースをより快適に過ごしていただけることを一番に考えていきました。


第1期工事で改装した2階フロントからつづくスペース

 

-今、まさにコロナ禍という状況において、これからのホテル業界をどのように捉えていらっしゃいますか?

-植本さん:今、ホテル業界がどうなのかというと、コロナ禍で国内客やインバウンド数も激減して、ホテル不足から供給過多のフェーズに入り、減少する宿泊客を獲得するために福岡市内では低価格競争が激化しています。そのような状況においてもホテル件数は増えつづけています。特に、宿泊特化型ホテルの増加が著しいです。やはり、ホテルの在り方そのものを変えないといけないな、という実感がありました。そんな中で新しいプロジェクトが、つい先日、始動したところなんです。

-どんなプロジェクトですか?

-植本さん:当ホテルの1階に新しくテナントさんが入ってくださることになりました。

-飲食店ですか?

-植本さん:はい。”THE ONO MARKET”という、天神・博多・糸島など福岡を中心に店舗を構える、福岡を代表する人気飲食店〈ONOグループ〉が手掛ける新業態の店舗です。レストランとグロッサリー、そしてONOのおもてなしを融合した唯一無二の店舗になると思います。

-THE ONO MARKETさんとはどのようなつながりで?

植本さん:オーナーの小野さんがテナント募集の看板を見て連絡をくださったのがきっかけだったのですが、話をしていくうちにすっかり意気投合しちゃいまして。地元福岡に根ざした”HOTEL×飲食店”がタッグを組んで、とても面白いコンテンツになりそうです。いわゆる「飲食店」というのではなく、もっと身近な存在として、宿泊のお客さまも近所の方も気軽に立ち寄っていただけるような場所をイメージしています。

-いいですね!長浜鮮魚市場が近いので、福岡ならではの旨い魚もいただけそうです。

-植本さん:実は、中尾さんと出会った当初「海外のホテルでは近所の方が自分の居場所のようにホテルのロビーを利用していて、それってすごくいい雰囲気ですよね」と話をしていたんです。宿泊しないんだけど、気軽に立ち寄れる場所。予約して行くとかではなく、ちょっと1杯呑んで帰ろうかという、親しい距離感みたいなのがある場所になってくれるといいなと思っています。

-街に開かれている感じがいいですね

-植本さん:そうですね。スーパーの要素も入っているので、近所の方にも気軽に利用していただきたいです。ホテルの宿泊客の方には、ここで長浜市場直送の鮮魚をメインにした九州博多料理を楽しんでいただいたり、九州限定の食材が買えたり、お土産が買えたり、出張で来られた際は、地場の旨いものを地元スタッフと語りながらつまむ。みたいな、地元スタッフとの交流を通して小さくても”記憶に残る体験”をしていただけると嬉しいです。

-植本さん:まだまだコロナへの恐怖心がぬぐえない中、当ホテルの滞在だけでも福岡の夜を十分に堪能できるようなコンテンツが挿入できれば、出張で福岡へ来て、エトワスに泊まって、一人でも旨いものを肴に角打ちで飲む。もしくは、テイクアウトで持ち帰って、部屋でゆっくりテレビ見ながら1杯飲んで寝ようか、という体験が提供できれば、エトワスでの1泊が特別な宿泊体験になると思うんです。そこから「福岡に出張へ行くならエトワスに泊まろう」と思っていただけると、私たちとしてもとても嬉しいですね。

-ホテルなのに、家にいるような心地よさがありますね。

-植本さん:はい。エトワスを自分の家のような感覚でいろんな居場所に置き換えることができたら、ホテル滞在中のちょっとした隙間時間をより快適に過ごしていただけると思っています。1階ではお土産が買えて、テイクアウトもできて、お酒を飲みながらデスクワークもできちゃって、そういう選択肢をコンテンツとして増やすために居場所をつくりながら、そのとき求められているニーズ応えるためにもアップデートしつづけたいですね。

 

植本さんは常に少し先の未来を見据えながら「福岡に滞在するお客さまに特別な宿泊体験を提供したい」という想いのもと、カタチにされていらっしゃいました。お話を聞いている私までワクワクしてきます。モブにとってもこのプロジェクトとの関わり方は少し特殊で、時間を積み重ねながら居場所そのものが成長していく過程を一緒に楽しませていただいている感覚があります。

今回、第4期工事を機に新たなプロジェクトもスタートされていらっしゃいますが、ここがゴールではなく、これからもアップデートされてつづける「ホテルエトワス天神」。ビジネスホテルという枠に捕らわれず、新しい発想でお客さまを迎えてくれるエトワスさんがこれからどんな面白いことを仕掛けられるのか、とても楽しみです。

 

HOTEL エトワス天神
〒810-0001
福岡市中央区天神3-5‐18
TEL:092‐737‐3233
公式ホームページ:https://hoteletwas.co.jp/