日本人のルーツとは?深い部分を掘り下げながらも、多方面で多様なジャンルの方と交流を持っている「藍森山・森山絣工房」の6代目、森山兄弟。後編は、お二人に感じる芯のしなやかさみたいなものがどこからやってくるのか、あるいはどうやって形成されてきたのかを聞いてみます。
藍森山・森山絣工房
福岡県八女郡広川町にある久留米絣(くるめかすり)の工房。江戸時代末期の安政5年(1858)創業は現存する久留米絣の工房の中で最も古く、糸の整経・絣の生地づくり・販売まで一気通貫している。
公式サイト|https://aimoriyama.com/
兄:浩一さん(上)弟:典信さん(下)
兄)浩一さん:
20代は苦労しました。21歳までアパレルショップで働いた後、声をかけていただいたセレクトショップに転職したら給料を全然もらえなくて(笑)20代ならではの若輩者ゆえ洗礼をたくさん受けつつ、まだ何者でもない自分を鼓舞しながら、いつか絶対に面白いことをやってやる精神で毎日を生きていました。そんななか、25‐26歳でアパレル業界に夢破れて実家に戻ることになるんですが、ファーマーズマーケットとのご縁から少しずついろんな人たちとつながりはじめて、個人としても仕事の依頼をいただくようになり、思い描いていた暮らしが動きはじめたのがこの時期です。
弟)典信さん:
僕も、年齢でいうと25‐26歳で実家に戻ってきました。大学では食品の安全性や衛生管理を学んでいて、果物の研究をしていました。卒業後は愛知県のお菓子メーカーに開発職で入社して2年半ほど働き、3年前(2021年12月頃)に福岡へ戻って家業を手伝いはじめました。もともとは40‐50代くらいで戻ってこようと思っていたのですが、一旦リセットするのもいいかなと。まだ20代だし、もし失敗したら転職したらいいかなくらいの気持ちで帰ってきました。
兄)浩一さん:
これから「藍森山・森山絣工房」としてやりたいこと。僕自身はこれまでの空間演出の経験を活かしてアート的なアプローチを仕掛けていきたいですね。そこに集まった人が心地よいと感じられる場をつくりたいと思っています。
例えば、大濠公園を舞台に突如ゲリラ的な演出がはじまったんだけど、実はその演出が藍染めで、それを起点に久留米絣の認知が広がるようなきっかけづくりとか。あとは、弟がカレー屋をやっているので工房でカレーを振舞ってみたらいいんじゃない?とかね。
弟)典信さん:
昨年(2023年7月)の水害以降、藍染めや久留米絣の生産ができなくなりました。でも、僕は僕にできることをやるしかない。ってことでカレー屋に注力したところ、思いのほかカレー屋が勢いを増してくれまして。先日、福岡の大丸で開催されていたポップアップの出店も、実はカレー屋として友人のイベントに出店していたことがきっかけで Bank of Craft の担当者さんと出会うことができました。活動してきたことは無駄じゃなかったな~と思います。
カレー屋からの派生でいうと、仕込みで出る玉ねぎの皮を使って染色ワークショップもはじめました。やっていることを無駄にしたくないという思いで活動していたら、いつの間にか全部「藍森山」としての仕事につながってましたね。
兄)浩一さん:
廃棄される八女茶でもお茶染めをしたり、ね。
弟)典信さん:
茶葉を摘んで乾燥させる工程で機械にへばり付く茶葉が出てくるんですが、それはお茶として商品にはできず、水で洗い流すしかないんです。なので、廃棄される茶葉をいただいてお茶染めとして活用しています。あと、草木染めの際に金属(鉄)を酸化させた溶液を使うんですが、酸化させるときによくお酢が使われていて、最初は市販品を使っていたのですが、大川市にある創業300年の庄分酢というお酢屋さんと染色の話をしていたら興味を持ってくださり、廃棄されるお酢を分けていただけることになりまして。最近は庄分酢を使った媒染液をつくっています。
兄)浩一さん:
水害で被災したときは大変だったけど、振り返ってみると水害きっかけで僕たちと携わってくださった方々がみなさん面白いんです。
弟)典信さん:
当時、兄がインスタに「被災して今こういう状況なので明日から復旧活動はじめます。手が空いている方がいらっしゃいましたら、手伝ってくださいませんか?」と投稿したところ、翌日、メッセージを読んでくれた方が20人くらい来てくださいました。ボランティアで作業を手伝ってくれるみなさんが、それぞれに特技や特殊能力をもっている方ばかりで。
総勢100名を超えたと思うんですが、その場での出会いをきっかけに僕たちも新しい取り組みをはじめたり、ボランティア同士で仲良くなっていたり。
水害という非常事態ではあったけど、それに負けないくらいここで生まれた良いこともたくさんありました。
今回のクラファンも、はじまりは工房復旧のための資金調達だったけど、本当にたくさんの方が応援してくださって、僕たちを知ってもらう場所になっています。だから「クラウドファンディング」という場を起点にもっともっと久留米絣を知ってもらうきっかけにしていきたいです。直接的な資金支援でなくともページを見て読んでくださるだけでも嬉しいし、僕たちのメッセージが何かしらのかたちで誰かに届いたり、工芸に興味をもつきっかけになって工房を訪ねてもらえたり、ここから小さな連鎖が生まれていくといいなと思っています。
兄)浩一さん:
なにとぞ、よろしくお願いします!
2023年7月の豪雨災害から1年。森山兄弟は、新しい場づくりへ向けてクラウドファンディングNEXT GOALを目指して挑戦中です。みなさまからの温かいご声援・ご支援をよろしくお願いいたします。
【藍染工房6代目 兄弟で紡ぐ久留米絣】江戸から続く日本の青を守る!災害から復活!
◉クラウドファンディングサイト
https://camp-fire.jp/projects/796689/view
◉応援期間:2024年11月15日(金)~12月27日(金)
◉目標金額:300万円(NEXT GOAL 500万円挑戦中!)