広島市内の街中に、ひょっこり現れたおやつとおつまみの専門店〈TSUKIGASE〉さん。かわいらしいパッケージとおつまみのバリエーションに惹かれて、つい覗きたくなっちゃうお店です。一歩立ち入ってしまえば、賑やかなおやつとおつまみワールドに心躍りだしそう!というのがピッタリ。そんなTSUKIGASEさんに、おいしいおつまみ話を伺ってきました。
TSUKIGASE
「小さなひとくち、大きなしあわせ。」をコンセプトに
子どものおやつにも大人のおつまみにもおいしい
多様なラインナップをセレクトしています。
https://tsukigase.info/
-もともとは、デザイナーの柳谷さん(以前、sukima+MOVEにてご一緒させていただきました!)からのご紹介でしたっけ?
スタジオモブ齋藤:柳谷さんから「こういう現場があって、スケジュールもタイトなんですが、どうでしょうか?」というご相談をいただいて「大丈夫です、いけます!」って即答させていただいたのがはじまりでした。
-そのときすでに、物件は決まっていたんですか?
土居さん:ほとんど同時くらいだったと思います。
-「おやつとおつまみの専門店」ということですが、どんなコンセプトでセレクトされているのですか?
土居さん:「一口サイズで、手でつまめる」というのがコンセプトです。おつまみって、なんでもおつまみになっちゃうので、ラムネやかりんとうでお酒を楽しむ方もいらっしゃったり。
-意外なおつまみもありそうね。
土居さん:いわゆる「珍味」っていうのがおつまみのイメージかもしれませんが、意外となんでもOKです。僕たちもこのお店ができるまでは「おつまみ屋さん」って感じで商品を卸販売(B to B)していたんですが、今回は小売店での販売ということで、おつまみだけじゃなく「お茶菓子」としても楽しめるようなラインナップにしています。
-客層が広がったかんじですね。
土居さん:実はここをオープンするまでに、2年ほどかけてシャレオの地下などでポップアップをしてみたんです。そこで、みなさんの反応をみてみて。
齋藤:ちなみに、僕もシャレオの時のお客さんです(笑)パッケージが素敵だなと惹かれて買ったのが最初でした。
-あ、そうだったんだ。
土居さん:この店をつくる前に流川の店を改装しよういう話も出ていたんです。それで、内装してもらえるところを探していたときに柳谷さんも手伝ってくださって、いくつか候補があった中のひとつにスタジオモブさんがありました。
-それでご縁をいただいたんですね。最初の打合せでは、どんなお話を?
土居さん:最初は、ロゴのデザインや僕たちがやっていることを見ていただきました。ロゴは、50年代のアメリカのキャラクターをイメージしていて、日本だとトリスおじさんみたいなイメージでやりたいとお伝えして。
-真ん中の什器もまた印象的ですね。
土居さん:これは齋藤さんから案をいただいたんです。商品パッケージのマークにもなっているんですが、豆の形のようにも見えるし、口の中におつまみが入っているようにも見える、ちょっと抽象的なデザインですよね。
-柔らかさがあって、いいですね。
齋藤:これまでのメインとなるロゴに対して、今回、新しいマークや新しい空間ができるとなったときに、その象徴となる形をどこかに入れたらいいんじゃないかなと、提案しました。パッケージにもなっているこのマークと同じデザインの什器をつくって、さらに半分に切った片側を棚什器にしています。
-什器の質感もお店の世界観とマッチしてますね。いわゆるコンクリ―トの荒々しさもなくて。
齋藤:これは、カチオンっていうモルタルの一種で、本来は下地の補修材です。でもこっちの方が、追従性が実はよくて。乾燥やひび割れなどの「動き」に対して強い素材なんです。
-モールテックスともまた違うんですか?
齋藤:どちらかというと、樹脂に近いですね。
-もしかしてこの形って、マークを忠実に再現していたり?
齋藤:そうそう、完全一致ですね(笑)実は、この上にも同じ形で鏡を吊るして商品を上から見せるという構想もあったんです。やっぱり、意味のある形にしたほうがいいなと思って。
-真ん中に曲線があることで、柔らかさとか誘導性も生まれますね。
土居さん:最初のプランはもう少し男性的な印象的だったんですけど、パルコの近くという立地や購買層も考慮して、女性らしさも出した方がいいのではということで、最終的にはこんな雰囲気に仕上がりました。
-今後の展望を教えてください。
土居さん:選ぶ体験というか、楽しめる体験みたいなものを取り入れていきたいと思っています。ものが売れづらくなってきていると言われているなかで、パッケージを置いているだけではやっぱり弱いと思うから「体験型」も取り入れていきたいです。ただ、それが何なのかまだまだ模索中で…。あとは、店舗をつくったことで、この雰囲気を気に入ってくださった雑貨屋さんやホテルなど、BtoBでの問い合わせや取引が増えました。店舗としての直接的な売上ではないのですが、会社全体としてはいい影響だと思います。
-感度の高いホテルだと、きっとこういうのを求めていらっしゃるのだと思いました。ギフトボックスも可愛いですし。
土居さん:これも柳谷さんのデザインで、並べたらイラストがつながっていく仕掛けがあるんですよ。パッケージデザインも含めて「ブランディング」という意味では会社にとっても効果がすごくあったなと実感しています。
-柳谷さんとは、ブランディングから一緒にされていたのですか?
土居さん:柳谷さんとのきっかけは…なんだったけなぁ…(笑)あ、というのも、柳谷さん自身がいろんなことをされていて、僕たちのこともコンサル的にずっと見てくださってくれていて。例えば、パッケージの形も「立つ」デザインにしたらもっと目に留まりますよとか、ポップアップを強く勧めてくださったのも柳谷さんでしたし。
もともとは、一番最初にロゴをつくっていただいたデザイナーさんから柳谷さんをウェブデザイナーとして紹介していただいたのですが、ずっと面倒を見てくださるので多方面に関わっていただいています。ほんとうに、色んな視点で考えていらっしゃるので、勉強になりますね。
-ウェブだけとかデザインだけとかではなく、マルチな才能を持っていらっしゃるめずらしいタイプですよね。
土居さん:そうなんですよ。それこそ、後から分かったことなんですが、齋藤さんが手掛けられていたガリバー|ドライブスルーの記事を見られて「僕もクロスオーバーしていきたい」とおっしゃっていたようで。だから、いろんな視点から実用性のあるものを形にしてくださるのだと思います。頼もしい存在です。
編集後記
いろんなところでTSUKIGASEさんのパッケージを見かけることが最近多くって、その度に手に取りたくなる可愛らしさや仕掛けがあるなぁと思っていましたが、そこには敏腕ディレクターの存在があったのですね。納得です…。「おつまみ」という概念を一新してしまった土居さんの発想と、それを形やイメージとして人の記憶に残るデザインにされている柳谷さん。そして、空間づくりからサポートさせていただいたモブとのバランスが、カチっとはまったような印象でした。すきなおつまみとお酒を買って、語らう時間をより一層楽しみたいと思います。