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編集の歴史
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◎人類最古の編集物は何でしょうか?
人類最古の文明はメソポタミアだと言われています。ほぼ現在のイラクにあたる地域に誕生したものです。メソポタミア文明(紀元前2900年)の壁画にはすでに絵があって文字があって、さらにデザインがあります。人類は太古から何かを伝えるために言葉やイメージ、そしてデザインを用いて表現していました。つまり、文明が誕生したその時から、編集行為が行われていたと言えるわけです。
◎世界で最も数多く流通しているコンテンツは何でしょう?
聖書です。ユダヤ教の聖典である旧約聖書とキリスト教の聖典である新約聖書を含めた聖書というものが地球上で最も読まれている印刷物なのです。
◎日本最古の編集物は?
紙を綴じた本に絞ると、古事記(712年)や日本書紀(720年)は日本最古の編集物といってよいでしょう。とくに後者は当時の日本の国力をあげてつくられた歴史書、つまり、日本という国の物語を編集しているのです。
◎では、世界最古の変愛について書かれたエッセイは?
枕草子(966年)です。作者の清少納言は世界最古の恋愛作家にして、同時に今で言うところのブロガーです。身の回りで起きた出来事を恋愛ネタを中心にして日々書き綴ったわけです。
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教会はグーグルだった!
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教会というのは印刷物が普及する以前から図書館であり学校であり、あるいはシンクタンクでありカウンセラーであり、今の世の中で言うと、グーグルのようなものでもありました。世界の知識をアーカイブして、人々の問いに答える場所だったわけです。
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メディアの進化(3つの座標軸)
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①フローとストック
流動性と不変性。フローとストック。フローというのは流れるもの、流通していくものです。ストックは保存・貯蔵・残す・貯める、という意味。メディアの進化の過程で印刷が誕生し、新聞が誕生し、雑誌が誕生し、そしてラジオが誕生し、インターネットが誕生したわけですけど、一点もので高級なメディアしかなかったものが大量複製され、さらに電波メディアやネットでは電波や電子となって流通するようになりました。
電波のメディアは基本的にフロー型のメディアで右から左へどんどん情報が流れていきます。ラジオやテレビというのは自分で記録しておかない限りどんどん消えていくものです。
それに対して紙のメディアは基本的にストック型。コンテンツはいったん定着されると変化することなく残ります。ですから、フロー型のメディアは大量伝播に向いていて即時性が高い。ストック型のメディアはアーカイブ性、資料性が高く、希少性があり愛着感があります。
②権威性と参加性
かつてメディアが一点ものだつた時代は、それはとても権威的だったわけです。印刷初期の本はかなり高く、本を書く人も出版する人も買う人も、権力をもつ人たちでした。しかし、メディアが発展してするにつれ、誰でもメディアが買える、持てるようになると、今度は誰でも参加できるようになってきます。
③記録性と創作性
伝達手段が事実そのものを虚飾なく記録して伝えるか、創作的に伝えるか。報道系のメディア(新聞・ニュース系週刊誌・テレビのニュース番組・ドキュメンタリー番組など)において大事なのは客観性であり「事実の記録」。一方で、エンタテイメント・広告・ファッション雑誌などのメディアで大事なのは「創作性」です。情報をいかに創作性を加えて魅力的に仕上げるかがキーとなります。
報道と編集は重なる部分があれど別の行為。報道の基本は「真実の伝達」であり、編集の基本は「情報による触発」です。
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編集とは何か
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今、メディアは「フローとストック」「権威と参加」「記録と創作」といった3つの座標軸の中で三次元的に進化、発展していると考えています。そういう21世紀に編集をしようとしている。では自分はなにを基軸に置いて編集していくのか。これらの歴史的な視点に立ち返っていくと、自分がどうすべきかがおぼろげながらも見えてくるのではと思います。
編集とは「企画を立て、人を集めて、モノをつくる」こと。「だれかに、なにかを、魅力的に伝える」といった目的をもった行為です。
情報を編んで点と点を組み合わせ延長線をつくっていくのが編集者の仕事。点在する情報にどのような点を加え、自分や他者の意見を出しつつも新たな気づきを与えていけるか。そこに編集者としての価値があるのではないでしょうか。