interview:matilda〈後編〉 

21/10/05

仕事がひと息ついた平日の夜、お話のつづきを聞かせていただこうと閉店後のmatildaを訪ねました。残暑漂う8月の夜はまだ少し蒸し暑く、くったりしていた私にサンザシソーダで迎え入れてくださったJUNさん。さりげない心配りからも、彼の人柄を感じます。

 

matilda代表 JUNさん

お客さま一人ひとりと丁寧に向き合って理想のヘアスタイルや髪質をデザインすること。安心して任せていただける存在であること。そして髪へのストレスがない自然体な暮らしをお届けすること。それが、僕の使命だと思っています。どんな瞬間も「あ!なんかいい感じ」と、心からご満足いただけるように、日々全力で施術を行っています。

<前編

 

-今日もおつかれさまでした。入口にすてきなフラワーアレンジメントがありましたね。

JUNさん:お客さまがプレゼントしてくださったんです。

-すごい!今、店舗は二人で回しているのですか?

JUNさん:メインは二人なんですが、週末など忙しいときにサポートメンバーとして手伝ってくれているスタッフがもう二人いるんです。

-え、いつの間にメンバーが増えたのですか?

JUNさん:やっぱり、僕たちだけで予約受付からスタイリングまで全てをこなすには手が追い付かなくて。おっさん二人ですし(笑)二人とも僕たちの段取りを理解してくれているからとっても助かってます。

-チーム力がアップされていますね!一緒に働く仲間を決めるときにJUNさんが大切にされていることって、何ですか?

JUNさん:第一印象はもちろんですが、色々と話をする中で、その子が持っている着眼点やお客さまに対する向き合い方、表情、話し方、距離感を見るようにしています。言葉に偽りがないか、自分の考えていることや本心をまっすぐ伝えてくれているかどうか。

-根っこの部分を大切にされているのですね。

JUNさん:一番は、人のためにどれだけ気持ちを込めて仕事ができるか、利他の精神を持っているか、かなと思います。

 

 

-理想のチーム体制ってありますか?

JUNさん:一人で全部こなせる人の集合体というよりは、カットがめちゃくちゃ好き!カラー好き!シャンプーヘッドスパ好き!人を喜ばせることがとにかく大好き!みたいな、各セッションのプロフェッショナルが集まって、全員で一つの売上をつくっていくチームが理想です。各々やりたいことに集中できて、個性を発揮できるような環境をつくりたい。正社員一択ではなく、給与体系も5~6種類揃えて、スタッフひとり一人のライフワークに合った働き方を提示できるような仕組みが理想ですね。

-柔軟な仕組みです。美容業界というか、組織としても珍しいですよね。

JUNさん:たぶん根底には「仕事だけをしてほしくない」という僕の想いがあるんだと思います。クリエイターとして感性を磨くためにプライベートも大切にしてほしくて、仕事とのバランスもとってほしい。仕事ばかりしていると、お金はあるけどそれを使う時間がないという状況が起こりがちで、でもそれだと何のために働いているのか分からなくなってしまいます。心のバランスをとりながら全力で仕事に取り組める環境をつくるにはどうすればいいか。例えば、働き方に応じて1年毎に契約内容を更新する、みたいな仕組みづくりができたら最高です。

 

 

-JUNさん自身の展望はありますか?

JUNさん:僕個人としては、いつかはハサミを置いて、人をプロデュースする方向へシフトしていきたいですね。スタイリストとしても一番大切にしていることはお客さまとの対話なのですが、その人らしさというか、個性を引き出すサポートが好きなんだと思います。

-お客さまとの対話、ですか。

JUNさん:得意なスキルは何?と聞かれたら、たぶん「カウンセリング」と答えます。

-カットとかじゃなくてですか?

JUNさん:はい(笑)対話時間を長くしたいということではないのですが、ただ、ちゃんと本心を聞き出すまでは、その方が求めていることを提供できないので、対話時間は必然的に長くなります。この場所にくるまでに、普段の髪の悩みとかもっとこうしたいというのが必ずあると思うのですが、いざ「今日はどうしましょうか?」と尋ねると、緊張して言葉が出てこなくなっちゃいます。だから、僕たちは心の声をくみ取る努力を重ねて、言葉の裏側を引き出して、言葉にできないところをいかにサポートできるか。それが、スタイリストとして必要な対話力であり、本当のカウンセリングかなと思っています。

 

 

JUNさん:スタッフに対しても同じです。一口に美容師といっても幅広くて、スタイリストの他にもアシスタントを極めたい子もいれば、広く美容の仕事に携わることがすきな子もいます。一方で、スタイリストとして独立した子にとっては、店をサポートしてくれるスタッフが必要になってきます。お客さまにもっと喜んでもらいたい、売上を上げたいと思えば思うほど、一人でできることには限界がくる。その時にオーナーとスタッフの双方にとってメリットがあるような、個人が魅力的に働けるような仕組みづくりができたらいいなと思います。

-美容業界をみんなで支えるような広い視点の仕組みですね。

JUNさん:そうですね。美容に携わりたい子に対して同じカリキュラムで教育をして、アシスタントを必要としている店舗へ送り出す。勤務先の店舗でもカリキュラムを共有して、みんなで一緒に美容業界を支えていけたらいいですよね。

-「先生」みたいな教える立場になろうと思ったことはなかったのですか?

JUNさん:美容学校の講師になろうと思った時期もありました。でも、技術的なことは自分で学べる時代になっているので、検索すれば分かることはネットにお任せして、僕がやるべきことは、本人も気づいていない才能の芽を見つけてあげて一緒に育てていくことかなと思っています。

 

 

-JUNさんがスタッフを育てるときに、心がけていることは何ですか?

JUNさん:大事なことって後にならないと分からないんですよね。今じゃないんです。だから「今」伝えようとしない。メッセージは未来へ向けて投げるようにしています。

-なるほど。

JUNさん:でも実は、人へ教えるときって、自分自身が教わってたりしますよね。今回の独立で一番の気づきは「ありがとう」という言葉の重みかもしれません。

-「ありがとう」の重み…

JUNさん:オープン当初、店を二人だけで回すことがこんなにも大変だったかと思い知らされて、今まで周りのスタッフに助けてもらっていたことを実感しました。経験を積んで、ある程度の立ち場になると、当たり前のありがたさみたいなことをつい忘れてしまうんですよね。感謝の気持ちを持っていたとしても、なぜか言えなくなってしまう。でも、今回ゼロから再スタートしたときに、スタッフの存在の大切さに改めて気づくことができて、心からの「ありがとう」を自然に伝えることができました。

-心からの「ありがとう」

JUNさん:今、オーナーとして経営の勉強もしています。いつか、自分の店を持って経営をしたいと思う子が現れたときに、僕がちゃんと教えてあげられる存在になりたいから、そのためにも頑張ります!

 

どこまでも後輩想いで、自分のことよりも誰かが喜んだり笑ったりすることが何よりも好きな方なんだなと感じました。JUNさんが描く次のステージでもお手伝いができるように、私たちもチーム力を上げていきたいと思います!

インタビュー:+MOVE編集長