エルムクリニック神戸院 

点在する要素/好みと思考が同居するクリニック

エルムクリニックは、広島院を皮切りに、福岡、岡山、京都、熊本、大阪へと地域に根付いたクリニックを目指し展開している。7店舗目の設計として指名コンペにより選定いただき、コンセプトづくりから空間設計、さらに家具セレクトまで含む提案を行った。

敷地は、兵庫県神戸市中央区下山手通りに位置する東栄ビル4階。多くの車が行き交い、人通りも多い場所。薄いレンガのような石材によって仕上げられたアーチの開口部を持つ神戸らしい建物の一つであった。
地域に根付いたクリニックを目指したいというクライアントの想いと土地の固有性を掛け合わすために空間にも石とアーチを要素として取り入れている。
エルムクリニックが大切にしていることの一つに「治療方針はメスを使用する美容整形ではなく、メスを使用しない美容皮膚科」としてのサービス提供がある。つまり新しい自分に生まれ変わるのではなく、元々の自分の素顔を大切にしながらポテンシャルを活かすということだった。
どこか、僕たちのリノベーションに対する考え方に近く、今ある状況を生かすことを基本的な方針とした。ただ、クリニックとしての必要な機能を部屋として配置するとほとんどの場所が仕切られてしまい、空間が閉じていくことになる。そこで、神戸らしい要素やクラシカルな要素をクリニック全体に散りばめることにより、固有性を点在させながら全体象を形成していき、ある種のアート巡りのような体験を目指すことにした。

廊下は回遊性を高め、アーチが要素として感じられるようにプロダクトとして点在させている。また、カウンターについても「クラシカルな印象はリズムにある」と定義し、一定のリズムと石目による重厚感を与えた。

解体跡はそのまま残し、その痕跡もまた固有性を高めたモノとなった。
ここまでくると、テーマカラーのピンク色も活きてくる。設計者と施主が一体感をもって進めていくようなプロジェクトとして成果をあげるために、好みと思考が同居するような居心地の良いクリニックとなることを目指した。



場所|兵庫県神戸市
用途|美容クリニック
クライアント|医療法人ELM
設計・監理|株式会社スタジオモブ
施工|株式会社土手工芸
撮影|exp 塩谷 淳

2021|Hyogo